特集 兼六「縁」

特集 兼六「縁」

建築物の背景

石川県のメイン事業へ
当社の技術と知識を結集

現在、しいのき迎賓館として市民に愛されているこの建築物は、元々石川県庁舎本館として大正13 年に竣工されたものである。県内の建築物として初となる鉄筋コンクリート構造を採用したことでも知られ、平成15 年に石川県庁舎が鞍月へ移転となるまで約78 年の間、街中のシンボリックな存在となっていた。その後多目的施設としての跡地利用案が進行していき、当社は東京に本社を持つ大成建設とJV(ジョイントベンチャー)を結び、解体工事から免震・耐震対策、増築といった施工を担当することとなった。当時の石川県においてメインとも言える大きな事業と目され、兼六建設が持つ技術と知識を総動員する重要な案件となった。

構造の特長

工事のスタートは北側の解体歴史建造物が生まれ変わる

最初の工事は、建物裏手広坂緑地側の北側解体工事であった。約80年間に渡り石川県の中枢となる県庁として建てられた歴史ある建築物である。解体の際は80 年の月日を感じ感慨深いものがあった。解体手順を整理するために事前の現地調査もまた入念に行われた。外壁に使っていたタイルは歴史建造物の一部として保存することが決められていたため、まずは手斫りにてそれらを撤去していく。内部には今では使われていない石綿(アスベスト)やPCB などの利用が見られたため、適正な処置をして除去・廃棄をしながらの作業となった。


既存サッシの撤去作業

既存屋根の防水層の撤去作業

「段取り八割」を信条に、
着実な進行でガラス張りを完成

建物裏手、北側の解体工事が完了するとともに、次の段階として北側の増築工事へと取り掛かった。正面部分「堂形のシイノキ」とは反対側にあたる北側は、広坂緑地の芝生越しに兼六園を望むようサッシのない全面ガラス張りの設計となっていた大面積一枚物のガラスを扱うことになるため綿密な搬入計画が練られ、「段取り八割」を地で行くスムーズな進行を実現。ビデオ撮影をして順調に進む工事の様子を県や設計事務所などに確認してもらいながら作業を行ない、北側の現代的な姿は経験豊かな技術者たちの手により完成へと進んでいった。


完成した全面ガラス張りの内装(ジャルダン ポール・ボキューズより)

歴史建造物の保存と活用のため、
現代の技術で免震・耐震を施した

建物正面となる南側は、外観や構造体の一層を活用することとなっていた。築約80年という建物だけに土台部分には免震装置を施す必要がある。工事は建物全体を持ち上げことから始まり、1階土間の下に工員たちが潜りほぼ手作業にて免震装置を入れていった。また内装工事の際には、2階と3階の梁へ新たに炭素繊維を巻き補強を行った。しいのき迎賓館建設のテーマの一つに、近代と現代の融合がある。見た目のデザインはもちろんのこと、元ある素材を用い現在の技術で補強する。そんな目に見えない部分での融合も図られているのである。


炭素繊維で補強された床梁

土間下の免震装置

正面側内装の解体作業は、
古い建物を知る良い機会に

北側の解体が終わるタイミングで、建物正面南側の内装の解体工事も開始された。北側部分と同じくアスベストやPCB などの処理が必要となる。古い床の振動測定の際には、県職員と横一列に並んで歩き測定を行ったりもした。これらは若い技術者にとって初めての経験となり、知識を増やす意味でも意義のある現場になったと言える。また中心市街地での作業となるため仮設工事によって周りを取り囲み、2 階や3 階から解体材をダンプカーへ向け搬出する際にはシュートを用いて行うなど、粉塵や騒音が出ないように細心の注意が払われた。


震動測定の為、実際に歩いて振動を測定する作業員

現代的な内装の仕上げに
当時の装飾を馴染ませていく

南側の内装解体完了後は内装仕上げがスタートした。解体は当社だけの受け持ちだったが、仕上げからはJVである大成建設との共同作業となる。そのためお互いの作業スケジュールを調整しながら協力しあっての作業となった。内装に関してはすべてを新しいものにするのではなく、解体時に梁の漆喰や窓についていた分銅などを保管し、それを修繕する際に付け直すといった試みが取られた。真新しい現代的な装いに建てられた当時の装飾が違和感なく馴染んでいく。建設から80年の時を経て、新旧デザインの融合が図られていったのである。


フローリングの張付け作業

フローリングの張付け作業手作業で復元された漆喰細工

施工者インタビュー

事業のスタート役として、
気を引き締めて任務を遂行

この工事は北側の現代的な設計と南側の旧県庁の改築といったように、分かれて作業が行われることとなります。私はその北側部分の解体工事を担当しました。綿密な工事計画の元に県を代表する新しい建築物が生まれる、その事業のスタートとなる解体工事の任命を受けましたので、その後関わる人たちにうまくタスキを繋げられるよう、気を引き締めて任務を行ないました。かなり古く歴史的に価値ある建築物ということで、使われている素材を見るのもとても勉強になりましたね。県内でも注目を集める案件に携われて、とても貴重な体験ができたと思います。

建築工事課長
東 隆宏

平成9年4月 兼六建設㈱入社

【資格】
1級建築施工管理技士

【主な現場】
㈱エリオ第6 期増築工事、(仮称)ケアハウス白山新築工事他2 工事、有料老人ホーム大友新築工事、北陸新幹線、北野融雪基地外3 箇所新築、すしざんまい武蔵東洋店新装工事(内装解体、外装・防水他、階段・スラブ・サッシ取付)、ひかり保育園改築工事、グループホームゆうけあ相河新築工事、北陸通信工業株式会社本社社屋新築工事

県を代表する建築物に
責任感とやりがいを持って

しいのき迎賓館は、当時石川県がメインと位置づけている工事の一つだったと思います。私は北側の増築エリアを担当しました。南側の免震・耐震、また内部の改修工事も工事の範囲だったので、責任感とやりがいを感じるとても大きな仕事でしたね。この建物の一番の特徴は、「堂形のシイノキ」のある正面は石川県庁舎時代のノスタルジックな面影を残し、背面はガラス張りの現代的な外観にするという部分。それらがうまく融合して、今では県を代表する建築物として賑わいをみせています。そんなしいのき迎賓館の姿を見ると、工事に関わった自分としても嬉しい気持ちになりますね。

技術部係長
中山 信吾

平成3年4月 兼六建設㈱入社

【資格】
2級建築士、1級建築施工管理技士

【主な現場】
金沢大学(角間Ⅱ)共通実験棟新営工事、(仮称)ロータリーパレス東松山新築工事、(仮称)菊川3 丁目共同住宅新築工事、(仮称)カーマホームセンター野々市店新築工事、旧県庁舎本館南ブロック改修等工事(建築)、津幡町立津幡小学校屋内運動場棟改築工事(建築)、野々市町文化会館改修工事(建築工事)

県民から愛される施設へ
携われたことを誇りに思う

私は南側内装の解体工事と、南側・北側の内装工事を担当しました。メインの建物完成後にも、駐車場やキャノピーなどの工事を行うため現場に足を運んでいたのですが、完成当初は金沢21 世紀美術館の注目度が高くて、しいのき迎賓館の存在がまだあまり知られていない状態でした。新旧が融合したとても素敵な建物ができたのに存在感を出せてないことを寂しく感じていたのですが、その後はこの建物を中心として周りが整備され、県を代表するエリアになりました。県民の方に愛され、憩いの場となるような施設に携わたことを、誇らしく思います。

現場所長
津田 幸大

平成11年4月 兼六建設㈱入社

【資格】
1級建築施工管理技士

【主な現場】
加藤邸新築工事、(仮称)ケアハウス白山新築工事他2 工事、向陽苑崎浦建設工事(建築)、久藤総合病院改修工事、県庁跡地地下駐車場整備工事(キャノピー等)、松任中学校第二体育館建設工事(建築工事)、金沢市庁舎耐震改修工事第3 期(建築工事)、味噌蔵町小学校校舎耐震補強工事第2期(建築工事)

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